
粉瘤
粉瘤
粉瘤とは、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂がたまって徐々に大きくなる良性の皮下腫瘍の事をさします。別名、アテロームや表皮嚢腫とも呼ばれ、背中や顔、首など全身のどこにでもできる比較的頻度の高い疾患です。
【症状】
皮膚のすぐ下にある“しこり”として自覚することが多く、普段は特に痛みや痒みもありません。腫瘍の中央には小さな黒い点が見える事があり、この点で皮膚の外と腫瘍内部がつながっています。当初は小さく症状の無いことが多いですが、徐々に大きくなり、独特の悪臭を放ったり、炎症を起こすことで突然腫れ上がり強い痛みや熱を持つことがあります。膿んでしまった場合は、可及的早期に切開して膿を出す必要があり、この場合には通院期間も長引きます。
自然に消退することはなく、治療の基本は炎症を起こしていないうちに外科的切除を行う事となります。
粉瘤の手術では内容物及び袋状構造物を除去する必要があります。特に、袋状構造物については、一部でも残ってしまうと再発するリスクがあるため、慎重に取り切る必要があります。
【くり抜き法】
トレパンと呼ばれる円形の刃物またはメスで皮膚を貫通して粉瘤に小さな穴を開け、内容物を圧出した後に残った袋状構造物を切除します。小さな傷(1㎝程度)で手術が可能ですが、炎症性粉瘤や、過去に炎症を起こした粉瘤、再発した粉瘤などでは袋状構造物の癒着が強く、くり抜き法では切除が難しくなる場合があります。
【紡錘形切開法】
粉瘤の直径と同程度の長径の紡錘形皮膚切開を加えて、内容物及び袋状構造物を一塊として摘出します。傷は粉瘤のサイズによっては大きくなってしまいますが、くり抜き法より術野が広く取れるため、くり抜き法で切除困難な症例に対しても切除可能となります。
【切開排膿法】
皮膚及び粉瘤に線状の切開を加え、内容物を圧出し、可能な範囲で袋状構造物を破砕除去します。創部は縫合閉鎖せずに解放したままとし、自然に閉鎖するまでこまめに通院しガーゼ交換を行います。炎症が強く、内容物が完全に膿んでしまったり、粉瘤直上の皮膚が壊死を起こしたような症例に対して行います。傷跡も残りやすく、治癒にも時間がかかります。しかし、強い炎症を起こし膿んでしまった粉瘤では袋状構造物の完全除去が難しかったり、すぐに閉鎖すると再度膿んだり傷口が開いてしまうリスクが高いためにやむなくこの術式を選択します。
手術はいずれも局所麻酔を用いて日帰りで行うことが可能です。手術時間はサイズや炎症の有無によりますが、およそ30分前後を要します。
炎症を起こしたことのない小さな粉瘤は小さな傷で完治させやすく、炎症の経過があった大きな粉瘤や膿んでしまった粉瘤ではしっかりと切開しても再発のリスクが高まる傾向にあります。このため、粉瘤を疑う皮下腫瘍があれば、早めにご相談ください。